悪人
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/11/06
- メディア: 文庫
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先に映画を見てしまったのでストーリーは知ってた。
話の展開は本をそのままうまく映画化した感じだったけど、その感想は全然違うものになった。
違うものだけど、どっちも良い。
映画を見たとき“悪”とは…? みたいなこと思ったけど、原作ではそれは背景にある事件のことでしかなくて、むしろ、人と人との関係性、個人と社会との関係性と、その中にある孤独みたいなものを考えさせられた。
主人公祐一と彼を子どものころ捨てた母親との関係性、殺人犯と知りながら祐一と逃避行した光子と社会の関係性、祐一に殺された佳乃と周りの人との関係性…、事件の中心人物の“他者”との関わり方はどれも一方通行だ。
ただの一方通行は“無”と一緒。だから祐一は母親に金をせびることで、その関係性に意味を与えようとした。「被害者」と「加害者」は切っても切り離せない関係だから。
…このあたりが話の肝かな。
決して気持ちの良い話ではないけど、すいすい読めたし面白かった。